妊娠中は急激な体調の変化やつわりなどがあり、女性にとって負担が大きな時期です。お腹の中の赤ちゃんが少しでも元気に育ってくれるようにお母さんも健康に過ごしたいものです。妊娠中は様々な事が原因でお口の中のトラブルが起きやすくなる事をご存知ですか?
妊娠中はなるべくストレスをかけない方が良い、と言う理由で「妊娠中は歯科治療はしない方が良い」と思ってる方も多いようです。しかし、むしろお口の環境が悪くなりやすい妊娠中にこそ歯科治療を受けて、大事な妊娠期間にトラブルが起きないようにしておいた方が良いと言えます。
今回は妊娠中に起こりやすい歯のトラブルについて、またトラブルが起きた時どう対処したら良いのか説明していきたいと思います。
妊娠中に起きやすい歯のトラブル
①虫歯になりやすい
虫歯ができたり、急激に進行したりします。
②歯肉炎や歯周病が起きやすい
歯茎のトラブルが増えます。 歯磨きしたら出血した、歯茎が腫れている、などの症状が多いです。
なぜ妊娠中にこのようなトラブルが起きやすくなるのでしょうか。
①女性ホルモンの急激な増加
妊娠中は女性ホルモン(エストロゲンやプロゲステロン)の分泌量が通常の10〜30倍にまで増加します。歯周病原菌のうちの一つであるPrevotella intermediaはこの女性ホルモンを栄養源としているため、妊娠中に歯茎の炎症を起こしやすくなります(妊娠性歯肉炎)。アメリカの研究によると、妊娠中の女性が歯周病にかかった場合、早期低体重児出産のリスクが約7倍になるという恐ろしいデータもあります。妊娠中は特に歯周病に対するケアが重要です。
②唾液の分泌量が減る
妊娠中は唾液の分泌量が減り、性質も変化するため口の中がネバネバしやすいです。唾液には自浄作用といって、汚れを洗い流してくれる役割があります。しかし唾液の分泌量が低下して、お口の中汚れが洗い流されなくなると、プラークが溜まってしまいます。その結果、虫歯や歯周病の危険性が高まります。
③免疫力の低下
妊娠中はホルモンバランスが崩れます。また、妊娠中は”妊娠免疫寛容”といってお腹の赤ちゃんを免疫細胞たちが異物とみなさないように、一時的に免疫力が低下すると言われています。免疫力の低下することで、細菌に対する抵抗性が落ちてしまい結果として虫歯や歯周病のリスクが上がります。
④つわり
つわりは妊娠初期に始まります。つわりがあると歯磨きも苦痛になり、お口の中の衛生環境が悪化してしまい歯のトラブルが起きやすい状態になります。また、つわりによる嘔吐で胃液が逆流して、歯が酸によって溶けやすくなります。
⑤不規則な食生活
つわりの影響や妊娠後期には子宮が大きくなることで胃を押し上げるため、一度に多くの物を食べられなくなります。そのため、少量の食事を何回かに分けてたべがちです。食事回数が増えることで、口の中が酸性に傾いたままの時間が長くなり虫歯になりやすくなります。
⑥食べ物の嗜好の変化
妊娠中は食べ物の好みが変わることが多いです。甘いものを好んで食べることで虫歯になりやすかったり、酸っぱいものを好んで食べることで歯が溶けやすい環境になりやすかったりします。
妊娠中にできる治療
①歯のクリーニングと歯周病治療
妊娠中は妊娠性歯肉炎と言う病名があるくらいホルモンバランスの変化で歯周病が起きやすいです。そのため、クリーニング・歯周病治療は必須と言えます。
②虫歯治療
妊娠中は虫歯リスクが高まります。妊娠中に痛みを出したりしないように、虫歯は早めに治しておきましょう。
妊娠中は避けたい治療
①抜歯
親知らずの抜歯を含む抜歯は避けた方が良いでしょう。術後に痛みを伴ったり腫れたりするめ、痛み止めや抗生剤を飲まないといけません。妊娠中の薬の服用はなるべく避けた方が良いため緊急性がない限り、積極的に抜歯は行いません。
②外科処置
インプラントや歯周外科と言われる歯茎の手術は、術後に薬の服用が必要になるため妊娠中には行いません。
妊娠中の注意点
妊娠前期(〜15週まで)
妊婦さん、赤ちゃんにとって1番不安定で注意が必要な時期です。この時期は、お腹の赤ちゃんは重要な器官形成が行われています。ストレスがかからないように治療をすすめます。
妊娠中期(16週〜27週まで)
安定期と呼ばれる時期です。 ほとんどの処置を普通に行うことが可能です。治療しないといけない歯はこの時期に治療しましょう。
妊娠後期(28週〜出産まで)
子宮底が上がり心臓や肺が押し上げられて動悸・息切れが起こりやすくなります。 お腹が張ったり長時間の仰向け体勢が辛くなったりするため、短時間で終わる簡単な処置を行います。この時期は女性ホルモンの増加のピークを迎えるため、”妊娠性歯肉炎”となることが多いです。安定期が終わるまでに歯周病のケアをしっかりしておきましょう。
妊娠中に麻酔・薬・レントゲンは大丈夫なの!?
麻酔
歯科用麻酔は歯の周りに作用する”局所麻酔”といわれるものです。歯の周りに限定的に効くので、通常の使用量ではお腹の赤ちゃんには影響はありません。むしろ痛みを我慢してストレスを感じるより、しっかり麻酔をして治療を行うほうが良いと考えられます。
薬
妊娠中の薬は要注意です。特に妊娠初期の薬の使用はなるべく控えないといけません。歯科で処方されるお薬で多いのが、痛み止めと抗生剤です。痛み止めに関しては、ロキソニンやイブプロフェンなどの非ステロイド性鎮痛薬は、特に妊娠後期では胎児への影響が大きいとされています。そのため比較的安全なカロナールなどのアセトアミノフェンを処方されることが多いです。抗生剤に関しては、胎児に対する安全性が高いペニシリン系やセフェム系が処方されます。
レントゲン
妊娠中にお腹の赤ちゃんに影響が出る被曝量は約50mSvとわかっています。歯科のレントゲン写真撮影時の被曝量は、あご全体の写真(パノラマ)で1回約0.03mSv、個別の歯の小さな写真(デンタル)で1枚あたり約0.01mSvとなっており心配ありません。また、防護エプロンを身に付けて撮影していきます。
妊娠中だけでなく出産後もお母さんの虫歯や歯周病は、赤ちゃんに影響を及ぼすことが分かっています。妊娠がわかった際は、歯科医院でレントゲン写真を撮影してお口の中の状態を診てもらうことをおすすめします。そして治療が必要な歯があれば安定期の間に治療しておくのが安心です。
福岡県春日市の歯医者
アクロスモール春日歯科
福岡県春日市春日5−17 アクロスモール春日 1階